無謀クン
乗鞍スカイラインもバイクで走れるのは今年度で最後。
当然ながらみなさん乗鞍詣でのお話が盛んです。
その中で、料金所上の2個目(3個目?)のコーナーで転んだ人(Ke-nさんのお話です)の話を読んでいて思い出したことが・・いや・人物がいたので彼のお話をひとつ・。
もう10年以上前のことなので記憶があやふやですが、何とか憶えている部分だけ・・。
彼は突然お店にやって来ました。
ふつう、バイク屋にバイクを買いに来る人は、今現在バイクに乗っていて、そのバイクに乗ってお店に来るか、バイクを持っていなければ、何らかの方法でお店へ来てカタログを貰うなり欲しいバイクを見に来るわけですが、彼はハッキリ言って何をしに来たか判らない感じでフラッとお店へ来ました。歩いて来たはずです。
20歳くらいだった彼は何故か急にバイクに乗りたくなったらしく、何となくバイク屋へ来てみた・・そんな感じです。
客:「バイク見せてください」
店:「どんなバイクが良いんですか?」
客:「どんなバイクが良い?・ですか?」
店:「いや〜・・色々ありますからねぇ、どんなのが好きなんですか」
客:「いや〜・・乗った事が無いので解らないんです・・」
普通、こんな感じのお客さんとの商談は決まりません。
でも、彼が九州出身という事で話が続き、結局彼は当時まだニューモデルだったZX-4の中古車を買いました。
まん丸な顔に丸メガネ、小太りで背が低い、一度転んだらずーっと転がっていきそうな彼はとってもマイペース。
バイクに乗ってもマイペース。直線ばかりの所でも4輪の後ろをおとなしく走っているかと思うと、追禁で見通しもきかない場所で突然追い越しをかけたりと、バイクに乗り続けてきた人間にとっては到底理解不能な走りを見せ付けてくれました。
そんな彼をツーリングに誘いました。
今年で15年目を迎えたミッドナイトツーリング・その第一回目でした。
乗鞍スカイラインを走って畳平まで登り、ご来光を拝んで帰路につく・そんなツーリングです。
夜通し走るツーリングでヘンに興奮したのか、彼はすごいペースでぶっ飛ばす連中を追いかけて無謀な追越を繰り返し、一緒に走るみんなをずいぶんと怖がらせていたようです。
3時30分オープンの乗鞍スカイラインのゲート前に到着したのはオープン30分前の午前3時。
その時には彼は「無謀クン」と呼ばれていました。
平湯峠の途中からスカイラインのゲートまでは4輪が列をなして並んでいましたが、対向車線を走ってゲートのまん前まで来た私達はゲートオープンと共に一斉に飛び出しました。
畳平駐車場までのワインディングを独り占めです。
白みかけた空の下、いくつかのコーナーをクリヤして快適に走り始め、ミラーを見ると・・・・あれ???
先頭グループ数台の他が誰もいない!
しばらく待っていると4輪が来て、「後ろで転んでるよ!」と教えてくれました。
戻ってみると、ゲートを出て3箇所目ほどの右コーナー(登りの)でガードレールと地面の間に挟まったバイクをみんなで引っ張り出している最中です。
挟まっていたのは、もちろん「無謀クン」でした。
結局4輪の行列の最後尾で再スタートした我々は半渋滞の中を畳平まで走りご来光を拝んだ次第です。
後日、無謀クンはその超マイペースな運転のお陰で、当然の様に事故に遭いました。
バイクも彼の体もダメージを受けました。
そのケガも完治し、バイクも走れるように直した、更に後日。
彼は再び事故に遭いました。
さすがに連続の事故でバイクに縁がないと感じた彼はバイクを手放すことになりました。
残念な結末でした。
そして・・・更に後日。
無謀クンはギプスを付けて、お店に来ました。初めてお店へ来た時と同じく・歩いて。
「またやったの??事故!」
「ハイ」
「車で?」
「いいえ」
ナント・無謀クンは横断歩道を歩いていて車にはねられたのでした。
「災難だったね〜・・・」
「ハイ」
しばらく経った更に後日。
無謀クンがスーツ姿でお店に来ました。当然歩いて・
彼はボソッと言いました。
「都会のペースは僕には合わないようです、田舎(九州)へ帰ります。」
「そうだね・・・・良いと思うよ・・・」
僅か1年間の出来事でした。
田舎に帰った無謀クンは、今頃とっても幸せな・マイペースな暮らしを満喫していることでしょう。